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2024/07/29 経営

2024年の環境変化について

経営環境の変化に伴うリスクは、企業が直面する重要な課題の一つです。このリスクは、外部環境の変化によって引き起こされるもので、企業の戦略や経営に大きな影響を与得る可能性があります。今回は、経営環境が変化するリスクについて考えてみます。

まずは、この1年間でどのような環境変化があったのかを振り返ってみましょう。
(1) 国際紛争の激化
(2) インフレの急進
(3) 深刻な人材不足
(4) ChatGPTなど生成AIの拡大
上記のように、外部環境が大きく変化した場合、自社の事業計画に反映することが大切です。企業をとりまく外部環境は、マクロ環境と業界環境(ミクロ環境)に分けることができ、上記に挙げた4項目はすべてマクロ環境です。
PEST分析にて経営環境をカテゴライズした結果、以下の環境変化におけるリスクが見込まれると考えます。そこで、各リスクと対応するための戦略について記載致します。

1. 経済的リスク
・更なるインフレの上昇
・円安の定着
・米国、中国経済の先行き不透明感
・国内経済成長の鈍化・不況
・金利の変動
⇒経済環境が予測できない時代に備えて、リスク管理計画の策定が重要です。自社の製品やサービスを見直し、市場を多様化することにより、特定の市場への依存を減らすことができます。
たとえば、ある企業が主に自動車部品の製造に特化していましたがリスク分散のために航空機部品や家電製品の部品製造にも進出しました。これにより、自動車業界が不振になった際でも、他のセクターからの収益でバランスをとることが可能です。
さらに、新しい技術やイノベーションを活用して、市場の動向や消費者の行動を継続的に分析します。例えば、データアナリティクスと機械学習を導入することで、消費者の購買傾向や好みの変化をリアルタイムで把握し、製品開発やマーケティング戦略を迅速に調整することができます。これにより、会社が変化に柔軟に対応できるようになり、全体としての耐久力、いわゆるレジリエンスを高めることができます。

2. 政治的・法的リスク
・政治的不安定性
・法規則の変更
・貿易政策の変更
・税制の変更
⇒政治の出来事や選挙、政策の変更などを常にチェックし、それらが経営にどう影響するかを理解することが大切です。また、収益の源泉を広げて、一つの市場や政治体制の変更に左右されないようにすることで、変化に柔軟かつ効率的に対応できるようになります。

3. 社会的リスク
・更なる深刻な人材不足と賃上げ
・コロナ禍を経たライフスタイルの変化
・人口動態の変化
・社会的価値観の変化
・環境保護への意識の高まり
⇒社会的リスクを回避するための効果的な方法として、積極的な情報共有、透明性の向上、およびCSR活動の強化が挙げられます。ここではこれらのポイントに具体例を加えて説明します。
情報共有に関して、ある大手自動車メーカーが取り入れた取組みが例として挙げられます。この企業は新しい環境基準に基づいた車両の開発を進めていた際、開発プロセスを進める中で得られた情報を顧客、地域団体、供給業者と共有するための定期的なブリーフィングを実施しました。これにより、製品の安全性や環境への配慮が強化されるだけでなく、外部のステークホルダーからのフィードバックを取り入れることで、更なる改善が行われました。
また、CSR活動について具体的な例として、ある飲料会社の取り組みがあります。この会社は、地域の水資源保護を目的として、水源地の環境保全活動に投資し、地域社会と協力して清掃活動や環境教育プログラムを実施しています。従業員に対しては、健康促進プログラムや家族向けイベントを定期的に開催することで、福利厚生の向上を図っています。これらの活動により、企業は地域社会からの高い評価を受けるとともに、社員のモチベーションの向上を実現しています。

4. 技術的リスク
・新技術の出現による既存ビジネスモデルの陳腐化
・サイバーセキュリティの脅威
・データプライバシーの問題
・生成AIの活用
⇒ビジネスの世界では、技術的リスクを避けるために、常に最新の技術トレンドを把握し、その影響を評価することが不可欠です。例えば、人工知能(AI)の進化が、製造業に大きな変革をもたらしている現在、そのトレンドを理解し、自社の製造プロセスにAIを導入することで、生産効率を向上させることが考えられます。このように新技術への投資は、競争優位性を維持し、業界の変化に対応する手段となります。
また、技術導入の段階では、従業員のスキルアップが重要です。例として、クラウドベスのプラットフォームを導入する場合、従業員に対して適切なクラウド技術のトレーニングを提供することで、システムの効率的な利用が可能になります。
さらに、他業界の企業や技術供給者とのパートナーシップを検討することも大切です。例えば、自動車業界とIT業界が協力して、自動運転車の開発を進めるケースでは、両業界の知識とリソースの共有が新しい技術の成功を加速します。
このように、新しい技術の適切な評価、従業員のトレーニング、そして幅広い業界との協力により、技術的リスクを管理しながら、ビジネスの持続可能な成長を実現できます。

5. 自然環境リスク
・異常気象の深刻化
・脱炭素への動き
・自然災害の増加
・資源の枯渇
⇒気候変動は、供給網の中断や原材料の価格変動を引き起こす可能性があります。このため、サプライチェーンの多様化や地域ごとのリスク評価を行い、事業継続力強化計画(BCP)の策定を行うことが重要です。
また、脱炭素社会への移行は避けられない流れとなっています。政府や市場からの圧力は日増しに高まっており、カーボンニュートラルな事業運営を目指すことは、リスク管理だけでなく、新たなビジネスチャンスを生み出す機会ともなり得ます。例えば、CO2排出削減を目的とした製品開発やサービスの提供は、顧客の信頼を得る機会となります。
資源の枯渇への対応も重要です。この問題に対処するためには、リサイクルの推進や廃棄物の削減、代替素材へのシフトが必要です。リソースの効率的な利用はコスト削減にもつながり、経済的な利益をもたらす可能性があります。

まとめ
経営環境の変化は避けられないものであり、それに伴うリスクとチャンスは企業の持続可能性と成長に大きく影響します。
リスクを機に変革を推進し、柔軟な戦略を取り入れることで、変化を乗り越えることができます。経済、政治、社会、技術、自然環境といった各リスク領域において、先見性を持ちながら対応策を立てることが重要です。たとえば、市場の多様化、技術革新への投資、社会貢献活動の強化、災害対策の策定など、各種戦略は企業が直面する可能性のある様々な課題に対して強靭な体制を築くための基盤となります。これらの取り組みは、不確実な時代を生き抜くための必要不可欠なステップであり、企業が新たなチャレンジを受け入れ、成長し続けるための鍵となるでしょう。
結局のところ、変化への適応能力が企業の競争力を決定づけ、未来への道を切り開くのです。