column コラム

2023/08/16 その他経営

異業種への情報発信について

異業種への情報発信についてのお話です

ある老舗の草履製造企業の社長から「新規の市場を開拓していきたいが、どうすれば良いか分からない」とのご相談を頂いたことがあります。
伝統工芸品を製造しているが、卸先の問屋からは買い叩かれて、利幅が非常に薄くなっているとの事。そこで、新商品開発を進め、問屋からの脱却を目論んでいるが、どのような商品を開発し、どのように企業に商品を訴求していくかが定まらないというのです。

このような場合、先ずは自社の持つ「強み」を整理していきます。
「御社にとっての強みを聞かせてください」と質問すると、「人気がある〇〇という商品を取り扱っている」、「長年、付き合いがある得意先がある」など回答の多くはあくまでも既存顧客に対して既存商品を提供する上での表面的な強みに終始することがあります。

長期的な取引関係にある顧客に対しては、納期通りの商品・サービスの提供に重きを置いた取引になることが多く、改めて、自社の強みを訴求していないことがあります。
また、新規顧客開拓の際にも既存商品の機能面を訴求するに留まり、本来の強みの訴求にまで至っていないことがあり、意外と自社の強みに対する認識が曖昧なことが多いのです。

そこで、その強みが生まれた背景が見えるまで、さらに質問を掘り下げていきます。
掘り下げていく事で普段は既存顧客に伝えていない(昔は伝えていた)、自社の持つ技術力やノウハウが明確になっていきます。

ここで重要な点は、①自社の強みを再確認することと②自社の強みを分かりすく伝えることです。

ここで、冒頭の草履製造企業に話を戻します。自社の持つ強みを見つめ直した結果、草履製造技術を活かした装飾品を開発するに至りました。さらに自社の強みである技術やノウハウを見つめ直し、ホームページで訴求することとしました。

次にターゲットをホテル業界に絞り込み、部屋の装飾品として提案をしたところ、予想以上に反響を得たとの事です。和装業界の事業者にとっては、見慣れた技術や情報であっても、草履製造事業者との接点が無かったホテル業界の担当者にとっては、老舗草履盛業事業者の持つ技術やノウハウは非常に新鮮な情報として目に映ったのです。
日本の伝統技術を外国人観光客へ訴求するユニークな装飾品として、今後もホテル業界へ積極的にアプローチを続けられるとの事です。

以上のように既存の取引先や業界にとっては、当たり前の情報であっても業界が異なれば、全く、斬新な情報として目に映る事もあります。重要な点は自社の持つ強みを、異なる業界関係者が見ても分かるように丁寧に訴求する点にあります。

改めて自社の強みを見つめ直す時間を設けてはいかがでしょうか。