コンサルタントからみた「見える化」について
今回は、「見える化」についてお話をさせていただきます。
企業において、経営トップが過去の延長線ではなく新しい事業の方向を決めていかなければ、会社の存続が危ぶまれる時代になってきています。会社の10年後20年後のありたい姿を描き、社員と共有し、そのありたい姿に向かって、全社員が行動していくことが肝要です。
経営トップや幹部の方とお話しする中で、次のようにおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。
- 大丈夫だ、全部報告が上がってきているよ。
- 責任者に任せてあるから。
- 価格表はあるけれど昔からのお客さんに対しては値引は慣習なんだ。
- 売上は倍増しているから今期も良い決算のはずだよ。
隠れた真実がなければ、そして変化がなければ、長年の経験と勘でほぼ現状は分かるかもしれません。
しかし、次なる一手を打つ、業界の変化に対応するため不採算事業や製品ラインの見直しをするなど、将来に向かって戦略を決めたり施策を打ったりするとき、数値や真の強みや弱点が見えていなければ、判断を誤ります。判断を誤れば、事業基盤を揺るがす事態にもなりかねません。また、既に事業基盤を揺るがす事態に陥っていることに気付いていないかもしれません。
そういったことにならないため、また、ありたい姿に向かっていくための最初の第一歩が「見える化」です。
では、先ほどの経営トップや幹部の方のお話に出てきた要素を見える化することについて、少し考えてみましょう。
- その報告は、真実か、リアルタイムか、数値の根拠は、報告の頻度は、報告の手段は、報告内容は誰と共有しているか。
- 責任者の権限の範囲はどこまでか、権限の限度額を決めているのか、責任と権限は一致していて数値化または言語化されているか、全社員と共有できているか。
- 本当に主要顧客なのか、売上構成比は、利益率は。
- 売上が倍増した要因は何か、費用の増加率がそれ以上になっていないか。
全てに応えられるよう見える化を進めるのですが、具体的には何をすれば良いのでしょうか。
例えば、次のようなことが考えられます。
- デジタル日報を導入し情報を全社員で共有して、優秀な社員のノウハウの活用と課題の早期解決、将来の一手のためのネタ探しに活用する。
- 責任者の決裁権限の設定や稟議規定など管理体制を築き、ルールに基づいた行動を促す。
- ④管理会計制度、予実管理制度を導入し、収益管理に活用する。
社員を管理するためでなく、将来のためという目的を社員と共有できれば、見える化に向けた全社での取り組みも円滑に進められます。
見える化をすすめた後は、会社のありたい姿に向けて、経営トップが根拠ある数値で道しるべを示せば、社員も迷うことなく現場で次の一手を打ち、行動に移すことができます。
将来に向けての現状の見える化の重要性をご理解いただけたら幸いです。