column コラム

2022/06/26 事業再生経営

営業活動について

銀行出身の中小企業診断士である事業再生専門家の視点から、事業再生の状態に陥らないために、「転ばぬ先の杖」として知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。今回は、営業活動において営業戦略の重要性についてお話いたします。

 

■営業とは

会社を経営していくうえで、利益を上げるために必ず必要になってくるものが「営業活動」です。しかし、営業とはそもそも何でしょうか?簡単にいえば継続的に自社のモノ・サービスを売る行為を意味し、会社としての利益を得ることです。つまり営業とは、経済活動の基本であると言えるでしょう。

■営業戦略の重要性

経済活動の基本である営業の役割は重要ですが、営業活動において営業戦略はさらに重要となります。会社の営業戦略を考えるのは社長です。社長が戦略を考え、数字に落とし込み、営業員に理解させ、行動させる必要があります。考える時間がないとの理由で、戦略が存在しない場合、営業員は誰に何をどのように売ればいいのか分かりません。結果、営業員が勝手にターゲットと違うお客様に販売したり、安く販売したりしてしまいます。営業戦略がないために個人の力量に頼り、業績が悪化する会社の話はよくあります。

■現在の営業に求められること

現在において、営業はただ単にモノ・サービスを売ればいい時代は終わりました。営業論となると、コミュニケーション能力や自己管理能力、行動力等が話題になります。現在の営業にはこれらの能力に加えて、会社の営業戦略を理解し、戦略に沿った売上を上げる方法を考え、実行する力が必要なのです。

■売上を上げる方法

では、売上を上げる方法とは何でしょうか。

まずは、売上を構成する要素を分解します。

売上 客数 × 客単価

客数を分解します。

客数 既存客 新規客 流出客

次に客単価を分解します。

客単価 商品単価 × 商品数 × 購入頻度

となります。上の3つの式を統合すると、

売上 既存客 新規客 流出客 ×  商品単価 × 商品数 × 購入頻度

となり、売上を上げる5つの要素が導き出されます。

 

結果、売上を上げる方法は5つとなります。

新規客を増加する 

② 既存客の流出を減少させる

商品単価を上げる

商品数を増加させる

購入頻度を増加させる

 

この中で優先順位が高いことは、②の既存客を流出させないことです。

新規客と流出客を比べると、新規客を獲得する方が数倍難しいと言われています。

コストで換算すると新規客の獲得は流出客の減少よりも5~10倍コストがかかると言われています。

新規客を増加させる前にまず、既存客を流出させずに、既存客に必要とされること。

既存客に必要とされていない状況で、焦って新規客へ営業しても、基盤の商品(サービス)や組織が整っていなければ、いずれ失敗します。そして既存客に対して、商品単価を上げても買ってもらえる商品(サービス)を強化するのか、購入数を増加させるのか、頻度(リピート率)を上げる施策を採るのかを決めるべきです。

 

以上となりますが、現在置かれている状況によって、どの方法を採るべきかが違います。

まずは現状を分析し、営業戦略を考え、①~⑤のどの方法を採るべきかを社長が決定する必要があります。

■事業再生の局面で営業に必要なこと

さらに事業再生においてはもう一つ重要なことがあります。売上が悪化している状況では営業員の士気が相当下がっていることが想定されます。いくら戦略を練って、数字を作っても、営業員に売る気がなければ机上の空論になってしまいます。事業を再生できるかどうかは、社長が営業員の士気を上げられるかにかかっています。