~競合との差別化~中小企業にとっての独自性の創造
中小企業の経営戦略において、リスクとチャンスは欠かせない要素です。急変する市場において事業を継続するには、リスクを冷静に評価し、チャンスを見極める力が重要です。最新の事例と具体的な手法を交えつつ、中小企業の戦略的経営について考えます。
今回は、戦略的経営の基本として、中小企業が独自の価値提供とブランディングを通じて、リスクを回避しつつチャンスを追求する方法について解説します。
戦略的経営は全ての組織にとって重要なものですが、中小企業の持続的な生存・成長のためには特に欠かせないものであると言えます。戦略的経営を核に、競合との差別化を見極め、独自性を創出していくことが求められます。中小企業にとっては、独自性を創出していくことこそが、生存のための基本だといっても過言ではありません。以下の観点でその理由を解説します。
競合について分析する
競合について分析するフレームワークを解説します。競合とは、直接的・間接的を問わず、自社と同じターゲット向けに価値提供を行う組織のことです。自社がどのポジションを
目指すかを検討するうえで、競合の情報は必要不可欠です。
実際に競合分析するためには、まず「競合が誰かを明確化する」ことが必要です。初めに競合の一覧を整理したうえで、それぞれについて掘り下げるようにしましょう。
右図は「バリューチェーン」という概念を用いた企業分析の例です。これは企業が顧客に価値を提供するための直接的な活動「主活動」と、それを支える内部的な動き「支援活動」を分解し、それぞれのプロセスを詳細に考察する手法です。
競合企業の事業においては、「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」などの主活動がどのように設計され、具体的にどのような施策が実施されているのかを分析します。
さらに、「4P+誰に何を分析」を用いて事業の核心である「誰に、何を提供するのか」を明らかにし、「コア・コンピタンス分析」を通じて企業が持つ他社には真似できない資源を明らかにします。これにより、競合企業の資源戦略を詳細に理解することが可能となります。
「コア・コンピタンス分析」は、他社が模倣できない独自の能力、すなわち「顧客への価値提供を行う中核的な能力」を分析するフレームワークです。これにより、競合との比較を通じて「自社の独自の強み」を明確にします。
コア・コンピタンスを検討する上で有効な問いかけは以下の通りです。
<思考を促進する質問>
他社のユニークな取り組みは何か?
各社の強みや弱みは何か?
どの企業と提携すると利益があるか?
分析対象の企業がこれまでに積み上げてきたものは何か?
これらの競合分析のフレームワークは、自社の分析にも適用可能であり、自社分析ツールとして活用できます。何を分析するべきか、どの分析手法が適切かを考察し、フレームワークを柔軟に活用していきましょう。
バリュープロポジション
自社のコア・コンピタンスを把握するだけでは不十分で、それをどのように活用し、顧客にどのような価値を提供するかが重要です。これを「バリュープロポジション」と称します。
バリュープロポジションは、自社の製品やサービスが顧客にどのような価値を提供するのかを明確に示すものです。これを明確にすることで、顧客は自社の製品やサービスを選択する理由を理解し、競合との差別化を感じることができます。
<作成手順>
バリュープロポジションを作成する際には、以下の優先順位を考慮することが重要です。
① 顧客が求める価値
② 自社が提供可能な価値
③ 競争優位性
顧客が求める価値を最優先に考えることで、自社の意図が先行したり、差別化に過度に焦点を当てるといったリスクを防ぎます。
<注意点>
バリュープロポジションを作成する際には、以下の3つのポイントに注意してください。
①客観的な根拠に基づいて作成する:作成する際には、収集したデータや顧客のフィードックなど、客観的な情報に基づいて作成することが重要です。自社の理想や目標、イメージなどの曖昧な情報に基づいて作成すると、顧客が求める価値とのギャップが生じる可能性があります。
②誰が読んでも理解しやすいものにする:顧客に明確に意味を伝えることが重要なため、専門知識がない人でもすぐに理解できるかどうかも重要なポイントです。専門用語は避け、抽象的な表現は具体的にするように心掛けてください。
③状況に応じて更新する:一度作成したものでも、自社の新製品開発や市場の変動により、その効果が維持できなくなることもあります。特に近年はVUCAの時代と言われ、市場は予測困難で不確実性が高まっています。そのため、常に市場を観察し、変化に対応したバリュープロポジションへと更新していくことが重要です。
まとめ
独自性を創造するためには、自社のビジョンやミッションを明確にすることが重要です。ビジョンは、自社が目指す未来の姿を示すもので、ミッションは、そのビジョンを達成するために自社が果たすべき役割を示すものです。これらを明確にすることで、自社の方向性を明確にし、それに基づいた独自の戦略を立てることができます。
以上のように、中小企業が競合との差別化を図り、独自性を創造するためには、自社のコア・コンピタンスとバリュープロポジションを理解する必要があります。自社の文化や価値観を大切にし、新しいアイデアや取り組みを恐れずに挑戦することが重要です。そして、自社の成長や進化を促すことが、自社の独自性を創造する原動力となります。これらを実践することで、中小企業は競合との差別化を図り、独自性を創造することができます。