column コラム

2023/10/13 その他経営

~機械化・自動化がカギ~  金属加工業の今後の展望

新型コロナウイルスの世界的な流行や世界情勢の不安定化などの環境変化が立て続けに起こり、まさに現代は今後の予想がしにくいVUCA(ブーカ)と呼ばれる状況に陥っています。
そのような状況下においても経営を存続していくためには、環境変化に対応できる戦略を立てることが企業には必要です。
ここでは企業支援の専門家が、業界別に現状と今後の展望を解説します。

 

【金属加工業界の概況】

経済産業省が発表した「2020年⼯業統計表 産業別統計表データ」によると、⾦属製品業界の市場規模(製造品出荷額)は、15兆9,652億円でした。事業所数は2,5094で、⾦属製品製造業界で働く従業員数は、61万2,427人でした。

⾦属製品業界は国内の経済動向に比例する傾向が強く、また飲料⽤缶など生活必需品である消費材は影響を受けにくい一方、プレス部品やアルミサッシ・シャッターなどは自動車業界や住宅業界・建設業界の影響を強く受ける構造になっています。これらの業界には2019年以降の市場規模縮小が見られますが、⾦属製品業界は微増ですが成長傾向が続いています。


出典:2020年確報 産業別統計表を元に作成

2019年の製品出荷額は前年比0.9%増と微増だった、2017年度以降(4 〜5%)の増加率と比べて4分の1未満しか増えていません。
飲料⽤缶で見られるような、⾦属素材の樹脂への移⾏や、⾦属製品の加⼯における切削・板⾦・プレス・ダイキャストの3Dプリンターへの置き換えなどが進んでいます。
このように他の素材への代替、他の製造方法への移⾏などが、市場規模維持の課題となっています。
また、近年ウクライナ問題など世界情勢の影響でアルミニウムなどの⾦属の価格が⾼騰しています。材料⾼騰による値上げや、材料が手に入りづらくなることによる納期ズレなどが発生しています。

 

【⾦属加⼯業(切削加⼯業)の今後の変化】

①海外サプライヤーの台頭
中国のサプライヤーの処理能力が向上してきていて、国内の中小の加⼯メーカーと同品質、それ以上の成果物を製作してくるケースが増加しています。QCDに関しても中国企業の方が優れている場合は多くなっています。
背景に、日本の⼯作機械を使⽤するのが当たり前になっている点、現地の⼯作機械メーカーも性能が上がってきています。また、日本などの海外メーカーが中国へ進出して、現地サプライヤーへ発注し、QCDの指導も⾏っていることがレベルアップにつながっていると思われます。

②デジタル化・DX化
ソフトウェアの進化についてですが、これは当然CAD/CAMの進化によりプログラミング作成支援の環境がどんどん良くなっています。
AIの発展もあり図面を読み込ませるだけで加⼯のプログラムを自動的に作成するシステムが登場しています。今後さらに発展していくことが予想されます。
ソフトウェアに合わせてインターネットも⾦属加⼯業を進化させています。
⾦属加⼯業は顧客の問合せから、積算見積り、図面指示など、ビジネスプロセスが3DCADとインターネットの活⽤で大幅に進化してきています。
3DCADデータを入稿すれば即積算して見積りが提示されます。通常見積り等も早くても2〜3日はかかるケースがほとんどで、通常の納期は(数量にもよりますが)2〜3週間かかります。
見積が自動化されることで、ロットが小さく手間がかかっていたため、大手が参入してこなかった試作品や小、中ロットの領域に中堅、大手が参入してくることが予想されます。

③⾃動化の進展
⼯作機械の場合は、今までもパレットチェンジャーを付けて⾃動化も進んできましたが特定のメーカーの特定の機種になります。新機種に関しては、⼯作機械メーカーがオプションとしてパレチェンを開発して選択肢が増えてきると考えられます。現⾏機に関しては、後付⽤として産業⽤ロボットからローダ、アンローダを開発して活⽤できる状況になってきました。

④加工方法
切削加⼯ → 板⾦・プレス加⼯ / 鋳物 / アルミダイキャストと加工方法量産になると、コストが安い方法へ変わっていきます。
難しい加工に関しても3Dプリンターによる生産方法が主流になっていくことが予想されます。

⑤素材
電動自動車の普及に伴い、電動化や省電力化の流れが起きています。軽量化を求める流れにより、⾦属から非鉄⾦属、CFRP・CFRTPまたは樹脂への流れが起きています。
今後樹脂への流れが加速していくことが予想されます。

⑥後継者問題
現在の経営者の多くが⾼齢者で更に後継者がいない会社が増えてきています。⼩規模事業者で多品種⼩ロット⽣産を担ってきた会社がどんどんなくなっていく状況が毎年進んでいます。
外注先が減って対応が難しくなる加⼯業者も出てくることが予想されます。

 

【金属加工業の課題】

以上のように、金属加工業は「IT化」「自動化」「海外メーカーへの移行」などの流れが起きていて、中⼩の⾦属加⼯業、特に切削加⼯業は今までのままでは存続が難しい状況にあります。

その中でも中小企業が対応できる項目は「IT化」「自動化」だと思います。
とはいっても、大きな設備投資が必要となり、すぐに対応できる中小企業は少ないと思います。
そこで補助金による設備投資を提案いたします。

 

【ものづくり補助金について】

中小企業の製造業を対象とした補助金に「ものづくり補助金」があります。
申請枠は下記になります。

申請方法等は認定支援機関にご相談ください。
国は中小企業の設備投資を支援していますので、積極的にご活用ください。