column コラム

2022/09/14 組織

成功の循環モデル

今日は、組織を活性化させ、結果(好ましい成果)を出せる集団になるための考え方についてお伝えしたいと思います。

 

会社が出す「結果」(売上向上、業績向上、株価上昇、顧客獲得など)を上げたい。これは全ての営利活動を行う組織が目指すところでしょう。目標とする結果を出すために、私たちは日々の大小さまざまな仕事に取り組んでいると言えます。

では、その「結果」を変えたい、もっと良いものにしたい、というときに、あなたの会社ではどんな取り組みをしていますか。何を変えますか。どんなことを見直しますか。多くの会社では、今取り組んでいる「行動」について、見直すのではないでしょうか。仕事の段取り、ルーティンワーク、あるいは人材配置など。毎日取り組んでいる仕事の「やり方」「進め方」に問題があるから、結果が出ない。確かに考え方としては筋が通っています。しかし、やり方を変えてもなかなか結果に結びつかない、そんな経験をお持ちの経営者の方もおられると思います。

 

MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キム氏が提唱した「成功の循環モデル」をご存知でしょうか。

 

結果を出し成長する組織であるためには、ダニエル・キム氏は「関係の質」から始めるべきだと提案しました。

関係の質、つまり周囲との良質なコミュニケーション、信頼感やリスペクトといった「感情」の部分にまずは注目し、お互いの関係性を良好なものにする取り組みに注力する。

すると、思考の質、つまり自分が所属する組織や仕事そのものに対する考え方が変わる。

その結果、行動の質、実際の主体的で前向きな行動、例えば以前よりも工夫するとか、同僚間の協力姿勢が生まれる。

そして最終的に、結果の質、うまれる成果が好転し、仕事の目標が達成される。

だから、より一層、関係の質が高まり、思考の質がより高まり、そして…という好循環のサイクルが生まれる、というものです。

これをダニエル・キム氏は「グッドサイクル」と呼んでいます。

 

グッドがあるということは「バッド(悪い)サイクル」もあります。キム氏は、「結果の質」から変えようとすると、「関係の質」がギクシャクし、例えば失敗の押し付け合いや無用な対立が生まれ、消極的で事なかれ主義な考え方になってしまい、だから言われたことしかやらないとか、とにかく自分のことだけやっておこうなどの行動につながり、もちろん結果が出ない、だからますます関係性が悪くなる…。まさに悪循環です。

 

Google社の「プロジェクト・アリストテレス」が実証した「心理的安全性」も有名です。

誰がチームメンバーであるかよりも、チームがどのように協力しているか、という要因の方が、成果を出し良い文化を醸成するチームに強い影響を与える、ということがわかっています。

 

では、その同僚間の良い関係性は、どうやって築いていけば良いのでしょうか。

例えば、会議の前に「チェックイン」というやり方をとっている会社があります。

チェックインとは、会議の本題に入る前に、テーマを決めて参加者が1分ぐらいでスピーチをする、というものです。テーマは気軽なものでOK。例えば「今の気持ち」「自己紹介」「今日の会議テーマに対して思っていること」「近況報告」などです。文字で読むと、本当にそれで関係性が良くなるのか?と疑問に思うかもしれません。

実施している組織では、「お互いの仕事以外の顔が見えて、親近感を持つようになった」「同じ趣味を持っていることがわかった」「いつも寡黙な人が仕事に対して考えていることを知ることができた」「めったに会話しない人の一面を知ることができた」などの声が上がっています。

また、出張や営業の外回りの人が多いという職場では、ともすると、それぞれの従業員が「個人商店」のようになりがちです。そこで、お互いの動向や業務内容を「見える化」することで、関係の質を高めることができます。例えばクラウドサービスを使って、スケジュール、今日のTo Do、顧客情報や業務の進捗業などを共有すると、お互いの仕事をよく理解できるようになり、協力姿勢や「チームシップ」が生まれるのです。

 

結果の出せる組織になるために、まず従業員同士の関係の質から見直す、というやり方はまどろっこしく、遠回りなのではないか、と思われるかもしれません。

しかし、働きやすさと働きがいの向上、そして心身ともの健康経営が企業に求められる今の時代には、従業員に思う存分、安心して持てる力を発揮してもらう土台作りとしての「関係の質の向上」が重要なのではないでしょうか。

また同時に、この「成功の循環モデル」の真ん中には、組織が目指す目的や目標(ビジョンやミッション)がある、ということがとても大切です。

ただ仲良くなるのではなく、同じ組織で、共通の理想の未来に向かって、同じ時代に共に進む仲間としてより良い関係を築く、という前提があるかどうかを、関係性の質向上に取り組む際には、ぜひ自己点検してみてください。