column コラム

2022/08/26 事業再生経営

事業承継について

銀行出身の中小企業診断士である事業再生専門家の視点から、事業再生の状態に陥らないために、「転ばぬ先の杖」として知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。今回は、事業承継についてお話いたします。

 

■経営者の高齢化

中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は約4割を占め、今後数年で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるとみられています。

経営者の高齢化が進む一方で、親族内に後継者がおらず、後継者不在を理由に廃業を選択する企業が増えています。親族内承継の減少に伴い、従業員承継やM&Aによる第三者承継などの親族外承継も増加しており、事業承継の在り方も時代とともに変化しています。

■事業承継への課題

皆さんは事業承継についてどのようにお考えでしょうか。事業承継の場面では、不測の事態により後継者を決定せざるを得ないケースや十分な事業承継対策をしていなかったために、会社の業績が悪化してまったケースも存在します。

親族内承継や従業員承継の場合には、後継者の育成期間を含めると5年~10年を要します。日本人口の減少が予測される中、今後、中小企業の経営環境は、益々厳しくなることが予測されます。事業の持続的な発展のために、円滑な事業承継はきわめて重大な経営課題です。早めに準備が肝要です。

■事業承継への取組み

事業承継をこれから検討していく中で、具体的にどのような取り組みをすればいいか分からず戸惑っている方もいらっしゃいます。スムーズな事業承継を実現させるために事業承継計画を策定することをお勧めします。

中小企業庁の事業承継マニュアルによる、事業承継の準備、計画の作成から実行までのステップは下記の5項目となります。

 

①事業承継に向けた準備の必要性を認識する

後継者を次期経営者として必要な能力を備えた人物として育てることは、一朝一夕ではできません。経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望まれます。現社長と後継者候補との間で意識のすり合わせを早い段階から行っておくことが肝要です。

②経営状況・経営課題等の把握する(経営の見える化)

自社の経営状況や経営課題、経営資源等を見える化し、現状を正確に把握することから始めます。事業の将来性の分析や会社の経営体質の確認を行い、会社の強み・弱みを再認識し、取り組むべき課題を洗い出します。そして、未来に向けて経営方針を定めます。

③事業承継に向けた経営改善を実施する(会社の磨き上げ)

事業承継は経営者交代を機に飛躍的に事業を発展させる機会です。より良い状態で後継者に事業を引き継ぐために、自社が強みを有する分野の競争力を強化していくとともに、効率的な組織体制を整備します。

④事業承継計画策定

②経営の「見える化」、③会社の「磨き上げ」を進める過程で明らかになった経営上の課題を解消しながら、後継者と二人三脚で具体的なアクションを設定した事業承継計画を策定します。後継者不在のため、第三者へ事業を引継ぐ場合は、希望に適った相手とのマッチング条件に沿って、資産の移転、経営権の移譲を進めていきます。必要に応じて早めに専門家に相談することも有効です。

⑤事業承継の実行

株式、事業用資産や経営権の承継を実行します。

■まとめ

事業再生の場面において、金融機関の視点では今後の継続的な事業運営について判断する際に、後継者の有無が重要視されます。

事業承継を円滑に進めるためには計画的に準備をすることが重要です。事業を承継できる体制を早い段階で整えることで、会社の業績、市場の動向を踏まえてベストなタイミングで事業承継を実行に移すことができます。また、後継者の手腕、適性をじっくり見極めることもできます。事業を将来に向けて維持、成長させていくために、現状把握をしっかり行い、具体的な対策を実行しながら、後継者へのスムーズな承継を目指しましょう。