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2022/09/09 ブランディング

こういうブランディングは100%失敗する

「こういうブランディングは100%失敗する」

 

《買い物の際の決め手は?》

みなさんはものを買うとき、あるいはサービスを買うとき、どのような判断基準を用いますか。品質でしょうか、価格でしょうか、あるいはこれら以外の基準でしょうか。おそらくたいていの人は、いくつかの判断基準を組み合わせるのではないかと思います。

商品も判断基準もたくさん存在するので、あらゆる商品をあらゆる基準で比較することは現実的にはほぼ不可能です。しかし、実際には普段からみなさんは大して労することなく商品を選べているはずです。

なぜでしょうか。それは無意識にフィルタを使用しているからです。消費者はフィルタによってあらかじめ購入候補を大幅に絞り込むことで、判断にかかる労力を省いているのです。

シャンプーを購入する場合について考えてみましょう。

 

この場合、人は香り・値段・機能性・安全性など、様々な基準で商品を選択するでしょう。ただ、先に述べた通り、あらゆる商品をあらゆる基準で比較することは現実的には困難です。そうする代わりに、私たちはよく、まず商品名やメーカー名に見覚えがあるか否か、好感をもてるパッケージデザインか否かなどの「わかりやすい」基準で商品を絞り込みがちです。

一方、事業者の目線からみれば、消費者がフィルタを介して行う絞り込みを生き残らなければ商品を購入してもらえません。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の絞り込みの際に基準となったフィルタこそがブランドです。ブランドにより、消費者と事業者のマッチングが促進・円滑化されているのです。ブランディングとは、フィルタをわかりやすく、効率よく消費者に訴えかける活動のことです。

全ての事業者が高い知名度を持っているわけではありません。大企業がひしめく市場に、無名の中小企業として勝負しなければいけない、ということもあるでしょう。

では、一体どんなことをすれば良いのでしょうか。いや、どんなことを「してはいけない」のでしょうか。

 

《失敗するブランディングとは》

さて、今回のテーマは「こういうブランディングは100%失敗する」でしたね。ブランディングはどういう場合に失敗するのでしょうか。いろんな場合が考えられますが、今回はその中から一つ、「価値観のミスマッチ」についてお話しします。

価値観のミスマッチとは、事業者が提供する商品と市場のニーズがマッチしていないことを指します。

有名な話ですと、有名ハンバーガーチェーン“M”の「ヘルシー路線」があります。2000年代に“M”は、競合店のレタスをたくさん使った健康志向のハンバーガーのような、野菜をたくさん使った商品を「バランスの良い生活を応援する」と銘打って発売したのですが、全く売れませんでした。なぜか?その理由こそが「事業者が提供する価値と、市場のニーズのミスマッチ」です。

消費者が“M”に行くのは、あのこってりした、お腹にどすん、とくる高カロリーのハンバーガーやポテトが食べたいからであって、健康になりたいから、ではなかったのです。「“M”ではカロリーを気にせず美味しいものを楽しみたい。バランスの良い生活は、“M”以外の場面で叶えます」。これが、市場のニーズ、つまりは消費者の本音だったということです。

それとは好対照で興味深いと感じる例は、最大手家電メーカーがコロナ禍に製造・販売した「不織布マスク」です。コロナ禍では一時期、マスクが市場から消えてしまい手に入らないということがありました。このメーカーは政府からの要望を受け、本来なら液晶を製造する工場で、その工場の人員と空きスペースを活用して、いち早くマスク製造に乗り出しました。

これが通常時なら、「なぜ家電メーカーがマスクを?それよりももっと家電に力を入れてほしい」と思われる可能性が高いでしょう。しかし当時は異常事態とも言えるマスク不足。畑違いのメーカーがノウハウもない中でマスク製造に乗り出す、というニュースは、「社会貢献」として市場に大いに受け入れられました。そのメーカーが本来持つ「高い技術力」などのブランドイメージも相まって、価格は当初、やや高額だったにもかかわらず、抽選申し込みのサーバーが一時期アクセスできなくなるほどの人気を博しました。

 

上記の例からわかることは、ブランドとはいわばその事業者の「長所」であり、消費者に最も「強く記憶されている」目印である、ということです。食欲を存分に満たす商品を比較的安価で販売しているお店が、健康志向の商品を販売し市場に浸透させたいと思うなら、自社のブランドを根底から見直し変更する必要すらある、ということになります。

 

《ブランディングに失敗しないために》

100%失敗するブランディングとは、こういった原則を無視しているブランディングということになります。

失敗しないためのチェックリストをあげてみましょう。

 

チェック内容
自社の「ブランド=強み・長所・消費者に強く記憶してほしい目印」はありますか。
自社のブランドを、最低限の機会を逃さずアピールできていますか。

(ロゴ、名刺、HPなどでのブランディング)

自社のブランディングは、顧客のニーズを満たしていますか。
顧客のニーズ調査はしていますか。
自社ブランディングには、顧客を納得させるストーリーがありますか。
常に社会情勢に目を向け、自社商品やサービスが社会とどう関わっているかを考えていますか。

 

市場の動きやニーズの変化、社会情勢に目を向けずに自社のブランディングにこだわりすぎることは、やはり危険です。

300年続く老舗企業なら、あえて自社のブランドにこだわり「変化しない」ことを強みとする戦略も有効でしょう。かといって、自社ブランディングがコロコロと変化するようでは、いくら社会情勢やニーズに合わせているといっても効果は出ません。それは、「目印作り」に失敗しているからです。

社会情勢を読み取り時代の流れに乗ることもあるけれど、軸がぶれてはいけない、ということです。

そのために必要なものが、自社の理念や経営方針、未来へのビジョンやミッションです。今自社が行っているブランディング、市場に提供している価値は、そもそもの出発点である自社の理念、ミッションに叶ったものになっているかどうかを見直してみることも、大切なことです。

今日は「こういうブランディングは100%失敗する」という、やや刺激的なテーマでお送りしました。他社の成功事例を参考にすることはよくあると思いますが、失敗事例も、有効な勉強材料となります。先に失敗してくれた先輩企業に感謝して、「自社は通らない道」を選んでいきたいものです。