column コラム

2021/07/29 組織

備えておきたい経営課題の対処法

(第45話)

企業の伸びしろはその時の経営課題にある、と言っても過言ではありません。

当コラムでは、企業が抱えがちな経営課題にスポットを当て、その対処法についてわかりやすくお話しいたします。

能動的な組織を目指す’’組織改革’’

新型コロナウイルスをはじめ、働き方改革や少子高齢化等、日々環境は変化しています。いわゆるVUCAの時代、変化に対応する力が必要とされていることは誰もが感じていることでしょう。

(※VUCAとは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字。ビジネス環境や市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語のこと。)

 

このような中、企業が変化に対応できているかについては社外のみならず社内の従業員も注視しています。

企業が今後の方向性を示さなければ、従業員の間に将来に対する不安感が芽生える恐れもあります。そうなると組織は萎縮し、方向性が見えない従業員は自ら考え行動する力を失ってしまいます。自ら動かない、のではなく「動けない」状態を企業が作っているのかもしれません。

今回は「組織」の観点から、「能動的な組織」「組織改革」「価値観の共有」をキーワードにお話したいと思います。

 

《能動的な組織とは?》

変化の激しい環境の中、企業が生き残り業績を向上させていくためには、「能動的な組織」であることが肝心です。

人はただでさえ変化を恐れるため、受け身の組織ではその変化に対応するまでに時間がかかり、企業発展には程遠くなってしまいます。

能動的な組織だと変化に対応できるだけでなく、社員のモチベーションアップ・上司の負担軽減・会社が掲げる目的の達成・企業ブランドの価値向上等、多くのメリットがあります。

 

では、能動的な組織とはどのような組織でしょうか。

近年注目されているのが、フレデリック・ラルーが提唱した「ティール組織」です。簡単にいうと、社長や上司のマイクロマネジメントがなくとも、従業員1人1人が目的のために進化を続けることができる組織のことです。

ラルーは能動的な組織について以下の5段階で示しています。

ここで課題となりえる点は、自社組織がどの段階にあるのかを正しく把握できているか、ということです。

自社組織の現状が把握できていなければ、次の段階を適切に見極めることができず効果が半減、もしくは的外れな取り組みになってしまいます。

自社組織の現状把握を阻害する主な要因としては、経営陣や人事と現場との間のギャップが挙げられます。

その対応策として、外部専門家からの第三者目線意見を聞く・社内アンケート等を実施することで、互いの認識の齟齬を客観的に見える化することにより取り除くことが効果的です。

 

《組織改革の進め方》

自社組織の現状把握ができれば、組織改革を実施していきます。

しかし、能動的な組織に限らずどのような組織を目指すにしても、組織改革を実施することは容易ではありません。組織は個の集合体であり、単に組織改革を掲げ伝達するだけでは個人レベルでの変化に留まるケースが多く、組織全体としては一向に変化しないことが多々あります。

そこで、どのような組織改革にも応用可能な、変革の際に必要なプロセスを紹介します。

 

<組織改革におけるプロセス>

 

上記プロセスを、私が以前支援した事業承継をきっかけとした組織改革の事例を基に具体的にご紹介します。

■状況:創業社長が60歳となり、2代目である息子さんへの事業承継の準備を開始する時期にきていました。グループ会社を増やしてきたことで、組織にまとまりが無くなっていることを懸念していた現社長に、事業承継をきっかけとした組織改革を提言しました。

■支援内容:以下図表にて説明します。

 

<実際の支援事例>

■支援結果:会社の価値観と目指す方向性が明確になったため、従業員1人1人が組織改革に対し理解を示し、組織が掲げる目標達成のために自発的に考え行動をするようになりました。

事業承継の面では、経営計画の実行の陣頭指揮を2代目が行ったことで、経営者としてのマネージメント力が身につき、また従業員にも次期社長としての裁量を示すことができるという成果がありました。本格的な事業承継を前に組織改革を果たせたことで、今後の承継計画をスムースに進めることが叶いました。

 

《価値観の共有》

組織改革の進め方について説明してきましたが、重要なのは改革に対する社長の覚悟はもちろんのこと、会社の方向性や目標を社内に浸透させ従業員の理解と共感を得ることにあります。

その手段として単に経営計画書を示すだけではなく、根底にある価値観を従業員と共有することが肝要です。この価値観を経営理念や行動指針に展開して社内で分かち合えば、目標達成のため具体的にどう行動するかを従業員一人一人が考え始めます。

また、1回の共有で従業員の理解と共感を得ることは不可能のため、組織改革と同時並行で時間をかけて丁寧に共有していくことが必要です。

まずは、自社の価値観を明文化して従業員と共有するところから、組織改革に取り組んでみてはいかがでしょう。