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2025/01/15 経営財務

~経営を支える資金繰り管理~

資金繰りは、企業経営において「血液循環」とも言えるほど重要な要素です。売上が好調で利益が出ている企業でも、資金繰りの悪化が原因で倒産に追い込まれいわゆる黒字倒産してしまうケースは少なくありません。特に中小企業や創業間もない企業では、資金繰りの不安定さが事業成長の妨げになることもあります。今回は、資金管理の重要性、資金繰り表の作成ポイント、そして資金繰りを改善する方法についてお話します。

(1)資金繰り管理の重要性
資金繰りとは、日々の収支や、将来の入出金の計画を管理することを指します。資金繰りを適切に管理することで、企業は次のような利点を得られます。
① 経営の安定化:資金がショートするリスクを回避し、突発的な支出にも対応できる余裕を持てます。
② 取引先や金融機関との信頼関係の構築:支払いの遅延を防ぎ、健全な取引関係を維持できます。
③ 成長戦略の実現:資金の流れを把握することで、余剰資金を成長投資に振り向けられます。
これらを実現するためには、単に「お金が足りるかどうか」を気にするだけでなく、先を見据えた資金計画が求められます。

(2)資金繰り表作成のポイント
資金繰り表は、企業の資金の流れを可視化するためのツールです。正確で効果的な資金繰り表を作成するためには、意識すべき点について説明します。

① 過去の資金繰り実績を活用する
まず、過去3〜6カ月間の収支データを整理します。これにより、収入と支出の傾向を把握しやすくなります。特に、毎月発生する固定費(家賃、給与など)と変動費(仕入れ、運賃など)を明確に分類しましょう。

② 入金と出金の時期を正確に把握する
売掛金や買掛金の回収・支払いタイミングは、資金繰りに大きく影響します。売掛金回収が遅れると、支払いに対応できなくなる恐れがあるため、支払期日や入金予定日を明確に記載します。月次の資金繰り表を作成している場合、月末時点では資金繰りが問題ないように見えても、月中で資金不足(ショート)している場合もあります。
そのため、回収・支払いのタイミングが非常に大切になります。
日毎の収支を記載した日繰り表を作成するのも効果的です。

③ 将来の予定を盛り込む
先の1カ月だけでなく、3カ月〜半年先を見据えた計画を立てることが重要です。特に季節変動の大きな事業者や税金支払いなど、出費が増えるタイミングを考慮しながら作成する必要があります。

④ 定期的に見直しを行う
資金繰り表は一度作成して終わりではありません。状況の変化や新たな収入・支出が生じた際には、即座に反映して最新の状態を維持することが必要です。継続して見直しをかけることで、資金繰りの精度も上がっていきます。

(3)資金繰りを改善する方法
資金繰りが厳しい場合でも、適切な対応を取ることで改善が可能です。以下に、実践的な改善策を紹介します
① 売掛金の回収を早める
回収サイトを短縮する、またはファクタリングなどの活用を検討します。特に長期の未回収金は、迅速に対応することが重要です。ただし、ファクタリングには高い手数料が発生することに加えて、回収の前倒しなので後の資金繰りには十分注意が必要です。

② 支払い条件の見直し
仕入先との交渉により、買掛金の支払いサイトを延長できる場合があります。これにより、手元資金の滞留期間を長く確保できます。最近では、買掛金支払の繰延を行える金融商品もありますが、ファクタリング同様に注意が必要です。

③ 不要な固定費を削減する
オフィスの縮小や、その他毎月支払が発生している契約の見直しなど、無駄な固定費を削減することが効果的です。

④ 資金調達の選択肢を増やす
銀行融資だけでなく、遊休資産(車両・機械)の売却、リースバック、保険の解約なども含めてさまざまな方法を検討する必要があります。また、資金調達ではありませんが、返済に関して金融機関に早めに相談し、対策を講じることが大切です。
資金繰りは経営の生命線であり、日々の管理と計画が欠かせません。資金繰り表を活用して現状を把握し、適切な改善策を講じることで、企業の成長と安定した経営を実現できます。
継続して見直し、管理を行うことが大切です。