決算について
ジャストコンサルティング(JC)中井です。
今年も早2月、「一月往ぬる二月逃げる三月去る」ということわざがあるように、正月から3月は、気が付けば終わっている、そんな季節になります。
決算を行うタイミングは、個人事業主と法人で異なり、個人事業主の会計期間は1月から12月で、決算日は12月31日と定められています。法人の決算日は企業が自由に決めることができるので、企業によってまちまちですが、日本では3月を決算月としている事業者の方が多いのではないでしょうか。
会社の決算報告では複式簿記の原則で作成された損益計算書、貸借対照表の公表が義務付けられています。日本では、江戸時代、大福帳(売掛金元帳)による独自の帳簿形式がありました。近江商人等では、すでに複式簿記に近い手法が用いられていたそうですが、本格的な複式簿記の導入は明治時代に入ってから、欧米から輸入されてからになります。
日本における複式簿記の導入は、明治6年(1873年)に福澤諭吉がアメリカの簿記教科書を翻訳した『帳合之法』を刊行し、同年、大蔵省紙幣寮が外国人のアレキサンダー・アラン・シャンドの講義を翻訳した『銀行簿記精法』を刊行してからとされています。今年は2023年、複式簿記が導入されてちょうど150年になります。
前置きが長くなりましたが、今回は、決算の目的や意義についてです。
決算の目的とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
①税務申告のため
企業が1年間に稼いだ利益には税金がかかるため、決算業務では正確な税金の算定も必要です。誤った税金の申告を行うとペナルティーを受けることになるので日々の適切な経理処理だけでなく決算業務での正確な処理も求められます。税務申告のために決算業務を行うという事業者様も多いことかと思います。
②ステークスホルダーのため
ステークスホルダーとは、株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関、行政機関、各種団体など、企業を取り巻く利害関係者を指す言葉ですが、上場企業にとっては投資家、中小企業にとっては、金融機関が、特に意識すべきステークスホルダーといえるかも知れません。彼らがその企業へ融資する際の判断材料として利用している訳です。
③経営者自身のため
決算を簡単に表現すると、その年度の事業活動で得た収入と、それに要した支出を計算しその結果である利益や損失を数字として、国や外部に対し発表する行為といえるでしょう。決算時には活動の成果以外にも企業が事業活動を行うために用意した資産・負債・資本の財務状況もまとめて発表することになります。
決算書とは、その企業の経営状況や財務状況を表すもので、例えるなら学生時代の成績表や健康診断の検診データのようなものです。それをみることで経営状況の善し悪しが判断できるため、経営者は事業運営での改善などに役立てることができます。
つまり、決算書を作成する目的や意義は、実は経営者自身のためともいえるのです。
例えば、次年度の販売および利益計画、設備投資計画、採用計画などは前年度の決算の成績をもとに決めることが多いでしょう。もし決算の数字が適切でなければ、計画は誤った内容になってしまい計画と結果が大きく乖離する可能性が高まります。結果として、大きな損失を抱え経営危機へと進むことになるかもしれません。
逆に適正な決算内容であれば、事実に基づいた計画が作成できるため、計画と結果の乖離が少なくなり期待する利益の確保も実現しやすくなるでしょう。
適正な決算業務を推進していけば、月次決算の実施に行きつき毎月の経営状況の把握ができるようになります。年度初めの計画と月次決算の結果を対比すればその差異が簡単に把握できるため、改善の一手が打ちやすくなり計画も達成しやすくなるはずです。
さらに月次決算を行い期末の決算を適正に行えば、毎月の資金管理は向上していき、資金のショート等による倒産リスクを低減させることができます。
月次決算を行っていない場合、資金の流れが掴みにくく売上債権の管理も甘くなってしまいがちです。売上債権の回収が遅れれば資金が不足して倒産の危機に直面することになってしまいます。月次決算で毎月のキャッシュの流れを掴むようにすれば、こうした経営リスクは回避しやすくなるでしょう。
業務改善にむけた費用の削減につなげることもできます。月次決算をしている場合などは毎月の費用の把握が進み、無駄な費用の支出に気付きやすくなります。その結果、対策が打てるようになり業務を改善して費用の削減も実現しやすくなるわけです。
月次決算を含めて決算業務を適切に遂行すれば、無駄な費用を抑えるとともに使うべき費用の支出を促進しやすくなるので、業績の改善・拡大も期待できるでしょう。