column コラム

2024/05/15 組織

2024 年4月から介護事業所で義務化:BCP(事業継続計画)について

企業を取り巻く脅威である風水害、地震、感染症等の災害が発生した場合に備え、従業員の安全を確保し、自社にとっての重要事業を継続することが不可欠となります。
災害による被害を最小限に抑え、早期の事業復旧を図るために、あらかじめ社内体制や行動を決めておく計画が必要です。これをBCP(事業継続計画)といいます。
2024 年4月には介護事業所におけるBCP(事業継続計画)対策の義務化がスタートします。すべての介護事業所が対象となるため、まだBCP(事業継続計画)を策定していない介護事業所にとっては、早急に対応する必要があります。

 

BCP を策定する目的

企業活動のリスク管理は多岐に渡りますが、昨今ではこのBCPが欠かせない視点になっており、策定する目的は大きく分けて3つあります。
○従業員を守る
BCP対策でまず何よりも大切なのが、従業員を守ることです。
災害や感染症等から大切な従業員やその家族の安全確保を図ることは、企業にとって最優先事項です。安全を確保した上でさらに雇用の維持を行い、従業員の生活を守りましょう。
○事業を守る
次に重要なのが、事業を守ることです。これまで企業が行ってきた事業を維持し、それを継続することは、取引先の事業継続にも関わる問題です。災害等によって一時的に事業が停止しても、それをいち早く復旧させ事業を継続することが大切です。事業の継続は、地域経済や社会への貢献にもつながります。
○企業価値を高める
災害等の思わぬ事態に巻き込まれたとき、多くの企業が操業の停止や倒産する事態に陥る可能性が考えられます。しかし、BCP対策を策定し、緊急時でも事業を継続できる強い企業であることは、取引企業や顧客に対して信頼感や安心感をもたらすことにもつながります。

 

BCP を策定するポイント

いつどこで起こるかわからない自然災害に備え、経営資源を守り、早期の復旧・事業を継続していくため、先に述べたようにBCP(事業継続計画)の策定は大きな役割を担っています。災害時にBCP(事業継続計画)として事前に対策を行なっていた組織と、何も対策を講じていなかった組織とでは、その復旧期間には約3倍もの期間の開きがあると言われています。BCP(事業継続計画)の策定メリットを理解し、自社に応じたBCP(事業継続計画)に取り組む必要があるでしょう。
ポイント①
災害等の緊急事態を想定し、予め緊急時の人員配置、対応責任者の決定、情報の収集方法、近隣業者との協力体制を備えておくことで、事業の早期復旧に向けて速やかな対応が可能となります。また対外的にも、信頼がおけると言えます。
ポイント②
自社にとっての中核事業、重要タスクの選定をしておきます。災害が起こった時にどのようなリスクが想定されるのか、そのためにどのような対策が必要で、コストはどのくらい見込まれるのか等、明確にすることが可能です。平常時からBCP(事業継続計画)に取り組むことで、業務の洗い出しや見直しによる効率化の機会にもつながります。
ポイント③
BCP(事業継続計画)は策定するだけで終わり、ではなく、従業員への周知はもちろん、日ごろから訓練を行い、随時見直しを行うことが必要です。

【BCPの策定手順】

 

中小企業庁 BCP 策定運用指針

①基本方針の立案
BCP(事業継続計画)策定の基本方針とは、自社の事業内容を踏まえて、非常時の事業継続に関する方針を定めることです。従業員の人命を守るため、供給責任を果たし顧客からの信用を守るため等、経営者の頭の中にある基本方針を記入します。
②中核事業、重要商品の検討
基本方針が確立できれば次の手順として、限りある人員や資機材の中で優先的に製造や販売する商品・サービス(重要商品)をあらかじめ取り決めておく必要があります。また、業務の洗い出しを行い、スムーズに事業を行える体制を整備しましょう。
③被害リスクの想定
企業がダメージを受ける原因には、地震や感染症等、様々なものがあります。こうした災害により、工場が生産停止になったり、店舗が壊れて商品を販売できなくなったりする場合があります。そのため、まずはここで災害等により企業が受けるリスクの影響のイメージを持ち、復旧するためのコストも想定しておく必要があります。
④事前対策の実施
中核事業・重要商品を提供し続けるためには、製造や販売に携わる従業員や機械設備等、様々な経営資源(人、物、情報、金等)が必要となります。そのため、必要な経営資源を確保するための対策(事前対策)を平常時から検討・実施すると共に、従業員に対しても周知し訓練しておくことが重要です。また、協力会社への代替生産等の取り決めや、協力体制の確認も重要です。
⑤緊急時の体制の整備
緊急時の対応には、初動対応、復旧のための活動等様々なものがあります。そのため、会社の対応に関する重要な意思決定及びその指揮命令を行う統括責任者を決めておくことが重要です。また、統括責任者が不在の場合や被災する場合も想定し、代理責任者を決めておきましょう。人員が入れ替われば計画の随時見直しも重要です。

 

まとめ
昨今の自然災害の頻発や新型ウィルス感染症の経験から、多くの企業がBCP(事業継続計画)の策定に取り組んでいます。2024年には介護サービスを提供する介護事業者のBCP策定が義務化となります。いざというときに自社の事業活動を止めず、維持できるよう入念な準備が必要です。また、BCPは策定がゴールではありません。平常時から訓練等を通して、社内体制も整備しておかなければなりません。計画を策定すると共に、従業員への周知や訓練の適宜見直しを行っていきましょう。