column コラム

2022/05/30 ブランディング経営

今日からはじめる「スモールブランディング」

企業のブランディングといえば、環境分析や自社の強み・弱みの把握から始まり、ブランドアイデンティティを見出し、そこから戦略を考えて・・と一大プロジェクトとして捉えられるかと思います。将来を予測することが困難な時代と言われる昨今、せっかく時間をかけて打ち出したブランディング戦略が想定していた効果を発揮しない、という事態も考えられます。

ここでは、ブランディングを身近に感じていただき、より具体的にイメージしていただけるように、「スモールブランディング」をご紹介いたします。ブランディングは大企業のみ必要となることではなく、全ての会社に必要となる概念なのです。これを読めば、すぐにでも始められるヒントがきっと見つかるはずです。

 

「見た目を変えるだけのスモールブランディング」

前回は、「明日からすぐ出来るスモールブランディング」をテーマに、老舗のラーメン屋さんを例にとってお話を進めました。今回はさらに具体的にお話をすすめていきましょう。

今回のテーマは「見た目を変えるだけのスモールブランディング」です。

 

一概に「見た目」といっても、業種によって意味はさまざまかと思います。個人で言えば、営業担当の方にとっては、「見た目」とはまさに文字通りの見た目、ルックスの事かもしれません。企業にとっては「オフィスが入っているビルの入り口」も、重要な見た目の要素ですし、店構えやお店の入り口は、お客様が実際にお店に入ってくれるかどうかの重要な要因となるでしょう。

ご自身の携わるお仕事にとって「見た目」とはなんのことになるのか、ご自身の場合に置き換えながら読んでいただけると良いかと思います。

 

《見た目を変えるだけのスモールブランディング①:商品やサービスの「見た目」》

自社の製品やサービスの販売戦略を考えるときには、まず「誰に買ってもらいたいのか」を考え想定することが大切ですよね。ドラッカーの言ういわゆる「顧客設定」や、マーケティング用語でよく耳にする「ペルソナ設定」です。

顧客やペルソナを設定したつもりでも、いざ販売すると、思ったように売れなかったり、想定したターゲットとは別の顧客からの反応が良かったり(つまり、想定した顧客からの反応が悪い)ということもままあります。

モノが売れない原因はもちろん複合的であり様々です。商品そのものの「商品力」を高めることがまずは基本ですが、ここではもっと取り組みやすい「見た目を変えるスモールブランディング」についてお伝えすることが目的ですので、思ったように売れない商品やサービスの「見た目」について考えてみましょう。

せっかく良い商品を開発し、顧客を設定したのですから、そのターゲット層に「刺さる」見た目になっているかどうかを再検討しましょう。商品の見た目を変える良いタイミング(取り組みやすい)は、「マイナーチェンジ」をしたときです。少し原材料を変えたとか、少しプログラムを変えたとか、少し新しい機能を付け加えた、などのタイミングです。商品の顔とも呼べる「ラベル」を変えることもできます。

 

例えば、お菓子やケーキなどを製造・販売する会社で、ある程度人気のある手作りガトーショコラ(チョコレートケーキ)をこの度、「グルテンフリー(小麦粉を使わないもの)」に変更したとしましょう。小麦粉を使わないケーキ作りは、昔ながらの方法であり、クラシックなイメージがあります。そこでこの機会に、ガトーショコラのパッケージ(外箱)を、クラシックなイメージのするものに変えることにします。また、グルテンフリーの食品はアレルギー対策という面も持っていますから、グルテンフリーの美味しいスイーツを探しているお客様という新たな顧客設定も可能です。

 

【図表1】伝えたい価値によるラベルの違い

●従来のガトーショコラ   ・手作り感・楽しいイメージ

●新しいガトーショコラ ・クラシック感・特別なイメージ

 

《見た目を変えるだけのスモールブランディング②:非言語コミュニケーションとしての「見た目」》

「メラビアンの法則」をご存知でしょうか。これはアメリカの心理学者アルバート・メラビアンによって提唱された法則です。「視覚」「聴覚」「言語」の3つの情報を同時に人に与える時に、例えば、怒った顔の写真(視覚)を見ながら優しい声(聴覚)の「好き」という言葉(言語)を聞いたら、人は「嫌い」という判断をすることがあり、その実験を重ねた結果、人の情報認識では、視覚情報55%>聴覚情報38%>言語情報7%の優先順位がつくということがわかったというものです。

 

一時期、「人は見た目が◎割」などの表現がもてはやされましたが、メラビアンの法則はそういったことを証明したものではなく、「視覚」「聴覚」「言語」の3つの情報が矛盾なく伝わることが大切だということを示していると言われています。つまり、笑顔の写真を見ながら優しい声の「好き」という言葉を聞いた時に、人はこちらの意図を取り違えることなく理解してくれるということです。

 

この観点から、ご自身のお仕事や経営する店舗を見直してみてはどうでしょうか。

「どなたでもお気軽にお入りください」という看板が出ているけれど、お店の入り口は暗く、お店に入ると「いらっしゃいませ」というぶっきらぼうな声が聞こえてくる。

これは、本当に伝えたいメッセージ(どなたでも気軽に入ってもらいたい)がお客様に正しく通じず、暗い入り口のお店や、ぶっきらぼうな店主の顔つきの方が強い印象を与えてしまうということになります。こういった、言葉や文字などで伝えるコミュニケーション以外のコミュニケーションを「非言語コミュニケーション」といい、見た目(顔つき、ジェスチャー、目線、ファッションなど)もその一つです。

ものづくりに情熱を持っています!というのがスローガンの企業で、担当者が淡々と話したり元気なく話したりする人だったら、少し違和感を持ちますよね。企業が認知されたいイメージと、それを体現する仕事ぶりや従業員の立居振る舞いが一致することが大切だということになります。視覚・聴覚・言語、の3つの観点から、自社のサービスや販売手法を見直してみてください。

 

《見た目を変えるだけのスモールブランディング④:あなたの「見た目」》

最後は、最も取り組みやすそうで、実は最もハードルが高いかもしれない、「あなた自身の見た目」を少し変えることについてお伝えしたいと思います。しかしこれも実はそれほど難しいことではありません。いきなりハイファッションに身をやつすとか、斬新な髪型にするなどは必要ありません(もちろん、やってみたい!という方はぜひ挑戦してください)。

このコラムの読者の方は企業の経営者の方が多いかもしれません。自身の見た目を少し変えてみる時に、基準とするのは「自社が社会に伝えたいメッセージは何か」ということです。つまりあなたの経営する会社の理念、哲学、ミッションなどをスタート地点として、あなた自身がそれを体現するメッセンジャーとなれているか、ということです。

 

ITコンサル会社を経営する人が、ITに弱いとどうでしょうか。優秀な技術者を雇い、天才的なビジネスセンスを発揮するのなら、ITに弱いとしても企業は成長するかもしれません。しかしそれは究極の理想論であり、ITに弱いITコンサル会社の経営者は、お客様にとっては頼りなく見えるでしょうし、説得力がありません。それと同じで、あなたの企業が掲げる理念と、あなた自身のイメージ(見た目、言動、醸し出す雰囲気)が合致しているからこそ、お客様にあなたの会社の製品やサービスの魅力が、説得力をもって通じるのではないでしょうか。

 

最後のお話は少し抽象的だったかもしれません。しかい「灯台下暗し」という言葉もあります。まずは自分自身を見直してみることで、自社が伝えたい価値や構築したいブランディングの強化のヒントが見つかるかもしれません。

次回以降も、こうしたスモールブランディングをテーマとし、より実践的で、すぐにでも使えるようなものを様々な角度でご紹介いたします。