column コラム

2022/05/26 事業再生

コスト削減について

銀行出身の中小企業診断士である事業再生専門家の視点から、事業再生の状態に陥らないために、「転ばぬ先の杖」として知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。今回は、収益性を高めるために必要となるコスト削減についてお話いたします。

 

■コスト削減の必要性

会社の目的はいろいろとありますが、究極は会社を継続(ゴーイングコンサーン)させることです。会社を継続させるためには、適正な利益を継続的に残していかないといけません。利益は、皆さんご存知の通り、下記の数式であらわされます。

利益=売上-費用

数式からも分かるように利益を増やすためにできることは、売上を増やすことと、費用を減らすことの2つの方法しかありません。事業再生の場面では、利益を増やすための方法として売上を増やすことより、費用を削減することを優先する方が多くあります。理由は下記の2つの通りです。

〇確実性が高い

売上を増やすことは、販売先や競争相手など相手がいることから、自社でコントロールすることは難しいです。一方で費用を減らすことは、自社内で取り組めるので売上を増やすよりも取り組みやすく、利益を増やす確実性は高いです。よって、先ずは確実性の高い費用を減らすことからはじめます。

〇効果が大きい

例えば、営業利益率が5%の会社が10万円のコスト削減を実現した場合、もちろん利益は10万円増えます。同じだけの額を、売上を増やすことだけで達成しようとした場合、200万円の売上を増やす必要があります。利益を増やすという点では、10万円のコスト削減が200万円の売上増と同じ効果となり、コスト削減の効果が大きいことは分かってもらえるかと思います。皆さんの会社の営業利益率はどれくらいでしょうか。ちなみに、営業利益率が1%であれば、10万円のコスト削減は、1,000万円の売上増の効果となります。

■何から手を付けるか

コスト削減に取り組む際の大原則は次の通りです。

〇費用額の大きなものから取り掛かる

コスト削減にかかる労力は金額の大小ではなく、現状の金額に対してどれくらいの比率を低下させるかで大きく異なってきます。同じ労力をかけるのであれば、効果が大きいことにこしたことはありません。よって、費用の額が大きなものから取り組むことが基本となります。

〇長い間単価が変わっていないものを見直す

次に直目する点は、今の単価がいつ決まったものなのかです。長い間単価が変わっていないものは、単価の削減余地が残されている場合が多いです。単価の見直しができないとの固定観念を捨て、すべての費用に対して見直しに取り組みましょう。

〇人件費の削減には注意が必要

多くの会社では人件費の比率が大きいので、人件費の削減に取り組むことも多いかと思います。但し、人件費の削減には注意が必要です。人件費の削減は、従業員のモチベーションの低下を招きます。結果として、従業員の離職や業務効率の低下など、コスト削減以上の効率性の低下を招き、利益が減ってしまう場合もあります。人件費の削減に着手する場合は、細心の注意を払いましょう。

■どうやって進めるか

コスト削減は一過性のものではなく、継続的に取り組んでいかないといけない課題です。そのため、いかに仕組化をして取り組むかが重要になってきます。先ずはきっちりと現状を把握するための分析を実施し、その上で削減目標を定めて計画を立てることが必要になります。計画に基づいてコスト削減活動を実施した後は、必ず結果を検証し活動結果を評価し、次のコスト削減へとつなげていきましょう。

■最後に

コスト削減ならすでに取り組んでいるという会社がほとんどでしょう。しかし、我々が関与させて頂いた際、効果的な取り組みができていない会社が多いことも事実です。コスト削減は出来ていると決めつける前に、本当に利益を増やす削減が出来ているのかを、当コラムを読んでいただいた上で再確認していただければと思います。