column コラム

2021/05/27 経営

備えておきたい経営課題の対処法

(第44話)

企業の伸びしろはその時の経営課題にある、と言っても過言ではありません。当コラムでは、企業が抱えがちな経営課題にスポットを当て、その対処法についてわかりやすくお話しいたします。

事業に新たな付加価値を “マーケティング戦略”

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発令され、変異株等による感染再拡大(リバウンド)の懸念から引き続き不安定な状況が続いています。

こうした状況下において、企業は「待ち」のスタンスでは業績が良くなることはなく、今こそ「攻め」のスタンス、つまり、能動的に更なる業績向上に向けて動く必要があります。

今回は「マーケティング」の観点から、どのような戦略を打てば良いのかについてお話したいと思います。

マーケティングというと、皆さま漠然とイメージできるものだと思いますが、その定義も多く存在します。著名な経営学者であるフィリップ・コトラーは、マーケティングを以下のように定義しました。

企業活動を行う上で、マーケティングの考え方は切っても切り離せないものです。語弊を恐れずに換言すれば、企業がモノ(サービス)を顧客へ届けるまでの一連の行動全てがマーケティング活動であり、その1つ1つを纏めたものがマーケティング戦略と言えます。

マーケティング戦略の流れは一般的に以下のとおりとなると考えられています。

<マーケティング戦略の流れ>

上記が、いわゆる教科書どおりのマーケティング戦略の流れとなります。

 

果たして、世の中のどれだけの企業がこの流れに沿ってビジネスを進められているのでしょうか?実際、1%にも満たないかと思います。一方で、世の中の企業のうちたった1%しかビジネスとして成立していない(少なくとも赤字ではない)かというと、もちろんそんなことはありません。
ここにビジネスの面白さが内在しているのです。つまり、教科書どおりにマーケティング戦略を進めなくとも、成功を掴みとることは可能なのです。
ここまで読み進めていただいたあなたは、「なんだ、結局マーケティング戦略とかいうけれど、知っていても意味ないのか。ホッと安心した」と思うかもしれません。
しかし、これだけは断言します。そんなことは絶対にありません、是非知っておいてください、と。

 

具体例でお話しましょう。
どら焼き屋の2代目社長となったあなたは、先代の慣習どおりにビジネスを進めています。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響もあり、売上高は低下傾向にあります。このままでは、近い将来従業員の給与さえ払えなくなることが予想されます。
経営者としての経験が浅いあなたは、マーケティングの知識が乏しく、こうした状況下で具体的に何をすべきかの検討もつきません。今はただ新型コロナウイルスが終息することを願いながら、その場凌ぎでしばらく値下げを行うこととしました。

 

上記シチュエーションが、まさに冒頭でお話した、「待ち」のスタンスなのです。
本当に打つべき手はないのでしょうか?

 

そんなときに、先述のマーケティング戦略の流れが頭に少しでも入っていれば、状況を冷静に捉えて分析することが出来るかもしれません。
<マーケティング戦略の流れに沿って分析>

もうお気づきかもしれませんが、マーケティング戦略とは、「考える切り口」を提供してくれるのです。考えるための引き出しと言っても良いかもしれません。

マーケティングの考え方は、状況を俯瞰的に捉え、考え漏れを防ぐことに非常に役立つのです。多面的に検討した結果、「価格を下げる」しかないと決断するのは勿論よいのですが、短絡的に「価格を下げる」意思決定を行うことはあまりに無責任です。

1つの事象をあらゆる視点で捉え分析し、優先順位を付けながらそれぞれの施策を実行していく。経営とはその連続であり、マーケティング戦略は「あらゆる視点」を提供してくれるのです。