column コラム

2022/03/30 組織

情報共有のしくみづくり

会社の資源の中でも「ヒト」は「モノ・カネ」などその他の経営資源そのものを動かす、最も重要な要素です。但し、単に人材に投資をしたからといって人的資源は潤うものではなく、組織全体で育むことが大切です。人づくりは一部の部署や担当者に依存するものではなく、企業全体で取り組んでいくべき重要なテーマだと言えます。

あなたの会社の人材が「人財」となりうるために、「人づくり」から企業経営を考えてみましょう。

 

「情報共有のしくみづくり」

皆さんの会社では時間や場所を問わず、全員が情報を活用できる状態になっているでしょうか。

今回のテーマは「情報共有のしくみづくり」についてです。

 

《担当者変更に伴うトラブル事例》

ある訪問先企業で「人事異動があると、引継ぎ内容が漏れてトラブルに繋がる事が多い」という相談を受けた事があります。事務所内を見せて頂くと、見事なまでに個々人のパソコンのデスクトップにはぎっしりとエクセルやワード、パワーポイントなどのファイルが並んでいます。どうやら、仕掛かり中のファイルのみが並んでいる訳ではなさそうです。
営業は各々が担当する顧客に関するファイルをデスクトップに並べ、日々、それらのファイルを更新して使用しているようです。

 

例えば、顧客に提出した複数の見積書ファイルが並んでおり、ある顧客用に作成したファイルをコピーして別の顧客向けの見積書を作成しています。

営業担当が交代の際には慌てて、それらのエクセルファイルを一気に共有ファイルに押し込んで、「過去の見積書ファイルをこの見積書フォルダに入れたから、分からない時はこのフォルダを見てください」と言ったように引継ぎを進めてしまいます。

しばらくして、顧客から過去の見積内容について問合せが入った際、新しい営業担当者は引継ぎ時に教えてもらった見積書フォルダを開きますが、そこにはファイル名もバラバラな数十のエクセルファイルが目に飛び込んできます。

「果たして、どれが最新のファイルなのか?」いくつかのファイルを開いていきますが、皆目見当が付きません。

 

このように、個々人が情報を抱え込むことが習慣化すると、会社資産として情報を管理する事ができなくなります。個々の担当者が得た些細な情報であっても、他の社員の業務には欠かせない情報かもしれません。

 

《情報共有されないことによるデメリット》

個々人が情報を抱え込む状態、すなわち、情報の属人化は業務の属人化に繋がり、周囲からはその人の業務の進め方が正しいのかさえ、判断が付かなくなってしまいます。誰がいつどこで、どの業務をどのように進めているのかが把握できなくなり、業務効率は著しく低下していくこととなるのです。

 

《情報共有を行うメリット》

情報共有を行うメリットとしては、上記の様な業務の属人化を抑制し、業務効率改善を進める事に加え、コミュニケーション活性化により、組織のナレッジが向上することなどが期待できます。

 

《情報共有を進める上で重要なポイント》

情報共有を進める上で重要な点を2点あげます。

 

一点目は社員の意識改革です。情報共有に対する意識が低ければ、どれだけ環境を整えても改善することはないでしょう。その為、情報共有されていない場合のデメリットと共有化後のメリットを丁寧に説明し、情報共有に関する社員の意識改革をしていく事が重要です。

 

二点目は情報共有の環境づくりです。デジタル情報であれば、情報共有ツールを導入するなども考えられますが、それ以外にもルール付けも含まれます。ファイル名やフォルダ名をどのように付けるのか等、属性付与に関するルールを取り決めます。他にもフォルダー体系(五十音順なのか、アルファベット順なのか、顧客別にフォルダ階層を作るのか、月別でまとめるのかなど)についても検討を進める必要があります。

上記以外にも言葉(単語)の統一などにも気を配りましょう。企業によっては同じドキュメントであっても、部署ごとに呼び名が違うなど、意外に統一されていない事があります。
例として「見積書」と「見積り書」、「営業業務」と「営業アシスタント」などです。ちょっとしたことですが、実際に情報を活用しようとする際に検索しても目的の情報に辿り着くまで時間を要したり、最悪の場合は、情報に辿りつけなかったりしてしまいます。

 

余談ですが、今では見かけなくなりましたが、数十年前にはタバコルームが設けられている会社が数多くありました。そこで、エンジニアと営業がタバコを吸いながらお客様の設備状況について話す何気ない雑談が、実は非常に重要なコミュニケーションの場であったという話があります。ある会社で設備のトラブルが発生し、修理の為に訪問したエンジニアは保守マニュアル通りにメンテナンスを行ったものの改善が見られなかったそうです。そこで、エンジニアが試行錯誤を重ね、独自の修理方法を見つけ出しました。

会社に帰ったエンジニアはタバコルームでその修理手順について何気ない雑談の中で、同僚の営業に話したそうです。実はその営業も同じトラブルを別の顧客で抱えており、早速、担当エンジニアに連絡し、解決に至ったという事例です。日々の業務の中で、本人が意識しない重要な情報が埋もれてしまう場合があります。そのような情報を拾い上げる場として一昔前にはタバコルームが機能していたという話です。

 

グループウェアなどのデジタルツールは非常に便利ですが、本人が重要であると認識しなければ、情報が共有されない事もあります。さり気ない会話の中に埋もれてしまう重要な情報を拾い上げる場として、気軽に情報交換できるような場を設ける事もアナログですが、情報共有の促進には役立ちます。休憩スペースにちょっとしたお菓子を置いて、自然に社員同士の会話が生まれる様に工夫を凝らしてみてはいかがでしょうか。

 

もし、業務の属人化や情報共有への取り組みについて悩んでいらっしゃるようであれば、デジタルとアナログの両面から情報共有促進のご支援をさせて頂きますので、何なりと弊社までご相談ください。