column コラム

2021/12/02 組織経営

「人づくり」から考える企業経営について

(第49話)

会社の資源の中でも「ヒト」は「モノ・カネ」などその他の経営資源そのものを動かす、最も重要な要素です。但し、単に人材に投資をしたからといって人的資源は潤うものではなく、組織全体で育むことが大切です。人づくりは一部の部署や担当者に依存するものではなく、企業全体で取り組んでいくべき重要なテーマだと言えます。

あなたの会社の人材が「人財」となりうるために、「人づくり」から企業経営を考えてみましょう。

 

「成果主義の長所と短所」

 

企業の人事評価制度の1つに、成果主義という考え方があります。年功序列とよく対比される概念ですが、導入に際しては慎重な検討が必要となります。今回は、成果主義を導入する長所と短所の観点から、その意義についてお話していきたいと思います。

 

《成果主義とは?》

企業の人事評価制度は様々なものが存在します。その1つに成果主義という考え方がありますが、日本で主に使用されている人事評価制度は以下のとおりです。

上表のとおり、成果主義は一言でいえば、仕事の結果である「成果」で評価される仕組みです。その評価基準は同じ企業内でも多岐にわたります。例えば、営業部門であれば販売量等の営業成績に応じて評価され、研究開発部門であれば開発製品数で評価される等、担当業務に応じて最も公平な評価基準が設定されます。近年では、年功序列と対比される概念として広く認知され、導入する企業も増加しています。

《成果主義導入の社会的背景》

成果主義は、1990年代頃より日本でフォーカスされるようになり、近年では大企業においても成果主義を導入する企業が増加してきました。その背景には、1990年代のバブル崩壊により業績が悪化する一方で、「成果を挙げていない社員にも高い給与が支払われている」、「勤続年数の長い従業員の人件費が増加する」といった問題が顕在化したことが挙げられます。終身雇用制度が崩壊した結果、派遣や請負、パートタイマー等の非正規雇用が増加し、柔軟な働き方が許容されました。そして、それぞれの従業員の成果に応じて評価する仕組みが広まっていきました。

しかし、人事評価制度は企業規模が大きくなればなるほど、変更が容易ではなく、実際に運用を開始し定着するまでには相当な時間を要します。したがって、人事評価制度は、その長所と短所を十分に見極めた上で、導入するかどうかの意思決定が必要となります。

次項以降では、成果主義における長所・短所についてお話いたします。

《成果主義の長所》

成果主義の主な長所は以下のとおりです。

①社員のモチベーションアップ

成果主義においては、仕事の結果で評価されるため、努力し成果を出せば出すほど、評価も高まることになります。したがって、個人のやる気やモチベーションアップにつながるというメリットがあります。真面目に仕事に取り組まず成果を挙げない社員がいた場合、もしもその人が真剣に取り組む自分と同じような評価を受けていればモチベーションは下がりますが、そうした事態を回避することが可能となります。

②企業の生産性が向上する

成果主義でない場合には、日々の業務をこなしていけばそれで良しという考え方に自然と陥ります。その結果、元々能力がある人であっても、そのような環境下においては能力を発揮しないようになることが多くあります。しかし、成果主義を導入した場合には、自らの成果が昇給や昇進に直接繋がることから努力する人が増加します。個々人のそうした努力の結果、会社全体としての生産性が向上することが期待されます。

③年功序列制度の不満が緩和される

年功序列制度を導入していた場合、特に有能な若手社員にとっては、勤続年数が多いだけの理由で評価を受けている成果の挙げない社員に対して不満を持つことがあります。そうした場合、転職等により有能な人材が流出してしまうことにも繋がりかねません。

しかし、成果主義にすれば、そうした不満が緩和されることが期待されます。仕事の成果によって評価されるため、若くても成果を挙げれば正当に評価され、昇進や昇給に繋がるため、納得感を高めることが可能となります。

《成果主義のデメリット》

一方で、成果主義にはデメリットも潜んでいます。

①個人主義に陥る

成果主義は、基本的に個人の成果を評価する仕組みです。したがって、個人の評価に繋がることのみにフォーカスし、個人の評価に繋がらない他者の仕事のサポートや、評価項目でない業務をないがしろにすることにも繋がる可能性があります。仕事の遂行において、他者と協調することは必須であり、協働することで良い結果にも繋がるということを十分に伝えることが必要となります。

②評価基準の公平性担保が困難

前述のとおり、評価基準は営業部門であれば販売成績、研究開発であれば商品開発数等、業務内容に応じて設定されます。しかし、事務や経理等の間接部門においては定量的に評価を行うことが困難な場合が多く、また研究開発部門においては、短期的に評価することが難しい場合もあります。また、部門間での評価基準が同等となるように、部門間の調整をしなければ、不公平感が生まれることになります。

こうした場合においては、無理に全ての部署・社員について成果主義を導入するのではなく、部署やチームに合った人事評価制度の検討を行うようにすることが必要となります。

③チャレンジ精神が低下する

成果主義を取り入れると、成果を出すことに集中するあまり失敗を恐れるようになる可能性があります。わざわざ大きなリスクを冒してまで新たな挑戦するのではなく、無難に着実な成果を挙げたいと思ってしまいます。

企業経営においては、安全で着実な選択も大切ですが、ときにはリスクを冒して新規事業にチャレンジしたりするといった攻めの姿勢も重要になります。社員には、こうした意識改革の取組みも合わせて伝えることが必要です。

 

以上のように、成果主義にはメリットとデメリットが存在します。

《成果主義導入にあたっての検討ポイント》

ここまで述べたように、成果主義には、メリットとデメリットが潜んでいます。その上で、成果主義を導入するか検討する際には、以下に挙げる2つの視点が重要となります。この2つを基準にし検討することをお勧めいたします。

【成果主義導入にあたっての検討ポイント】

以上、成果主義のメリットとデメリット、また成果主義の導入にあたっての検討ポイントについて触れてきました。重要なことは、成果主義が必要かどうかは、企業にとって異なるものであり、導入にあたっては多角的な検討が必要となるということです。人事評価制度の確立は、経営陣が一方的に決めてしまうと現場の混乱を招くケースが多く、可能な限り従業員も巻き込みながら慎重に検討することが重要です。